EVENT NEWS

2021-07-30 00:00:00

名古屋 / 熱田神宮

熱田神宮

愛知芸術祈願祭 「安息の祈り」PHOTO GALLERY

 https://seiransha.jp/photo/album/1114948

慈しみの神宿る古社 厄災祓いの神剣の聖域 -

 

 

 巨大な入道雲が空に沸き立つ真青な炎天のもと、夏木立の涼を感じる熱田の杜の中、日本有数の宮様である熱田神宮文化殿宝物館内において、新型コロナウィルス早期収束祈願を願う「愛知芸術祈願祭 安息の祈り」が開かれました。

 熱田神宮は創建約1900年、その昔、素戔嗚尊(すさのおのみこと)がヤマタノオロチを退治した際にオロチの尻尾からでてきたといわれる三種の神器の一つ、草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)が熱田の地に鎮座し、これを御霊代として日本の主神である天照大神(あまてらすおおみかみ)をご祭神に祀ったことから始まります。森林に囲まれた約6万坪の境内には、本宮、別宮外43社が祀られ、かの弘法大師お手植えと伝わる樹齢1000年の大楠や、平安時代の歌人・西行法師が旅の途中で休息し、歌を詠んだという二十五丁橋など、各所に名所が点在します。

 そして本展の会場となった文化殿宝物館には、長い歴史の中から朝廷や代々の幕府、戦国武将から寄進された多数の宝物が所蔵されており、その内容は刀剣や書跡、絵画、彫刻、工芸など、国宝や重要指定文化財に登録されているものを含め、6000点余りにものぼります。また、熱田神宮を含む名古屋の地は、戦国三英傑といわれる武将たちとも深い関わりをもっています。

 尾張に生まれた織田信長は神仏を信じない“うつけ者“と呼ばれましたが、今川義元との桶狭間の戦いの前に熱田神宮へ訪れ、先勝祈願の願文を奉納しています。いくさの直前に熱田に到着し、「熱田大神の力を借り勝利したい」と祈願すると白鷺が舞い降りる吉兆が現れたといいます。

 見事勝利した信長は草薙神剣の加護に感謝し、「信長塀」と呼ばれる土塀を奉納し、今も日本三大土塀の一つとして境内に120mの土塀が残っています。太閤豊臣秀吉は現在の名古屋市中村区生まれといわれ、地下鉄中村公園駅のほど近く、常泉寺という寺で生誕したと伝わっており、境内の中には秀吉の産湯として使った「豊太閤産常湯の井戸」が残されています。そして江戸幕府を開き、約260年の天下泰平のいしずえを築いた徳川家康は幼い頃、松平から駿府の今川へ人質として預けられることとなりましたが途中でさらわれ織田の配下に置かれてしまいます。織田信秀の命によりこの地の有力者であった加藤順盛の屋敷に預けられ、幼少時代の2年を熱田で過ごし、この時に織田信長と知り合ったといわれています。天下統一を目指し覇権を争った戦国武将たちも、熱田の地に対しては特別な想いや不思議な力を感じていたのは現代に生きる私たちと共通しているのかもしれません。熱田神宮はそんな歴史の移り変わりをみてきた神聖なる古社でもあります。

 

 

神への祈り 安息への想い -

 

 本展の会期中、名古屋市は緊急事態宣言等もなく、神宮には地元の参拝客を中心として色々な方のご来場を頂きました。特に最終の日曜日は熱田神宮に古くから伝わる「朔日(ついたち)参り」の日でもありました。これは毎月1(朔日)に、1ヶ月を無事に過ごせたことへの感謝と、新しい月の無病息災・家内安全・繁栄等を祈念する風習であり、熱田区のまちづくり団体「あつた宮宿会」により、2016年から「あつた朔日市」が開催されています。熱田に縁のある店が敷地内に出店として並びにぎわう中の目玉が「朔日市限定あつた宮餅」です。ひつまぶしで有名な「あつた蓬莱軒」と、名古屋土産でおなじみ「きよめ餅総本家」、熱田で愛される和菓子屋「亀屋芳広」、ほうじ茶が人気のお茶屋「妙香園」という、熱田区の老舗4社がコラボし、月替わりの味も楽しめる特別な5つ入りの宮餅です。お昼までには完売してしまうこの人気商品を求めて来られる地域の方や、宝物を見学に来られる方など、様々なご来館がありました。

 展示会場となる文化殿宝物館内には解放感ある天井高を生かし、5m近くのアケビの木やユリやアジサイの花などの植物と季節の花を中央から左右に伸びるようにあしらえ、その周りに芸術作品たちを配置し、緑豊かな自然の中にある神宮と溶け込むように会場内をデザイン致しました。訪れた来場者や会場関係者の方にも「こんな展示会をこの熱田神宮で見たことがない、本当に素敵です」、「芸術作品の新たな魅力に気づかされました」等、多数のご意見、ご感想を頂き、想像以上の大きな反響を頂くことができました。

 2021年現在もいまだにおさまる気配のないコロナ禍において、ワクチン不足や変異株の流行など、人々の心も憔悴、閉塞し、大切な人とも自由な交流ができず、元の人間らしい生活が取り戻せていない日々が続いています。しかしながら、本展覧会によって微力ながらでも束の間の安らぎを心に感じて頂き、また、唯一無二の素晴らしい作品を通じて熱田に祀られるいにしえの神々と、厄災や邪気を祓う力を宿す神器である宝刀に、1日でも早い安息の日が戻るよう想いを込めて祈りを捧げさせて頂きました。

 今回、このような状況の中でも大きな成功を収めることができましたのは、ひとえに作者様の素晴らしい作品、ならびに関係者様の多大なるご協力のおかげであります。あらためまして今後の皆様方のご健康、ご発展を祈り、心より御礼申し上げます。

 

 

1