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2022-06-24 00:00:00

沖縄 / 沖縄県立博物館・美術館

沖縄 / 沖縄県立博物館・美術館

沖縄本土復帰50周年「美ら島芸術祈願祭」PHOTO GALLERY

https://seiransha.jp/photo/album/1131063

- 南海の楽園 美ら島 -

 

 沖縄県は日本列島の南西端に位置しており、南北約400km、東西約1000kmと広大な海域に49の有人島と多数の無人島が点在し、構成されています。亜熱帯気候特有の暖かい気候で年間平均気温は23℃前後、6月下旬の梅雨明けから本格的な観光シーズンが始まり、旅行客も増えてにぎわいを見せます。

飲食店や土産物屋が並ぶ国際通り、美しいビーチ、世界最大級の水槽を持つ美ら海水族館、ひめゆり学徒の御霊を慰霊するひめゆりの塔など、沖縄には観光や大自然の絶景、歴史を物語る重要スポットがいくつもあります。2019年の火災で主要な建造物が焼失した首里城公園も、20206月からは段階的に遺構・残存物の公開を開始し、復興を目指しています。今年の沖縄地方は例年より1週間程早く梅雨が明け、一気に日差しも強まり、夏本番の絶好の青天続きの中、展覧会を迎えることができました。

 

 

- 琉球王朝から日本の一員へ 戦後統治下 -

 

 沖縄は日本、中国、東南アジアにも近いため「東アジアのヘソ」と呼ばれ、古来よりそれらの国々との交易を行いながら国際色豊かな文化を育み、栄えていきました。先住民は約18000年前に大陸から渡ってきたとされ、本州の鎌倉時代にあたる頃には、実力者が各地にグスク(城塞)を築く三山時代に入ります。そしてこれを統一した尚巴志(しょうはし)1429年に王朝をおこし、初代琉球王国を打ち立てます。アジア各地との貿易も盛んになり、この頃に泡盛、紅型、三線といった琉球文化の基礎が流入し、繁栄しました。その後、江戸幕府に組み込まれた琉球は独立国の体裁を保っていましたが、明治以降、1879年の廃藩置県により沖縄県となり、450年続いた王朝は終焉を迎えました。

 昭和に入り太平洋戦争に突入すると、沖縄の島々には飛行場が建設され、アジアの前線基地の色合いが濃くなります。日本は敗戦を重ね形勢不利となり、度重なる空襲により那覇市は炎上、1945年に連合軍が本島へ上陸して繰り広げられた地上戦は多くの犠牲者を出しました。終戦後、アメリカ軍統治下になりますが、現地での祖国復帰運動や、世界で批判されたベトナム戦争での米軍の出撃拠点に使われたこともあり、反米感情が高まり、27年後の1972年に日本へ復帰。米軍基地を維持したままでの不完全な返還は今も続く基地問題としてそのしこりを残すこととなりました。

 統治時代は本土渡航にパスポートが必要であったり、米軍物資の影響でコンビーフやステーキなどの食生活の変化、ジャズやロックの流入など、その後の沖縄の食・文化にも大きな影響を与えました。県の工芸品、琉球ガラスも元は、戦後の資源難のため、コーラやビールの瓶の再利用から始まったものです。

沖縄は長い歴史の中で王朝、日本への帰属、アメリカ統治、そして本土復帰と様々な経験をし、47都道府県の中でも独自の道を歩んできました。米軍による統治は返還から50年経った現在も種々の影響を残しています。

 

 

- 未来へつながるアートの懸け橋 -

 

 本展の会場となった沖縄県立博物館・美術館は、再開発の進む新都心・おもろまちに位置します。ここは那覇市北部にあたり、米軍基地返還に伴い整備された一大再開発地です。約214万㎡の面積のうち、元米軍基地は192万㎡を占め、大型ショッピングセンターや映画館、オフィスビルが建設され、県立博物館・美術館では郷土作家の絵画や彫刻、写真などを鑑賞できます。外観はグスクをモチーフにした斬新な建築デザインで目を引き、古代から琉球王朝時代、戦中戦後の沖縄の歴史や文化の興味深い展示や、企画展も充実し、沖縄の観光スポットとしても注目されています。

本展覧会は夏の観光シーズンとコロナ第7波到来前のタイミングであったということもあり、地元の方々や県外からの来沖客など、沢山の方にご来場頂くことができました。作者の方の想いを多様な表現で表した作品をご覧頂き、「深い思いに胸を打たれた」、「この展覧会を通じて沖縄という場所の立場、歴史を若い方にも考えてもらうきっかけになってくれれば嬉しい」といった声を頂きました。

 戦後77年、そして沖縄返還からようやく半世紀。日本にとって節目となる年に起こったヨーロッパでの戦争。それは様々な形で波及し、世界は大戦後に築かれてきた秩序から大きく変化を迎えようとしています。我が国も東アジアの安定に関して地政学的にも重要な場所に存在し、海の向こうの出来事と無関係ではありません。本展の開催意義は、これまでの歴史や世界で起きていることを認識し、平和のため、子供たちの笑顔を守るために個々がどうしていけばいいかを考える契機になればと願い、微力ながら沖縄返還50周年という節目での催しをさせて頂きました。この小さな波紋が大きく広がり、やがて凪のように穏やかに人々の心を平和への想いに導いていければと願います。

 最後に、今回の「沖縄本土復帰50周年 美ら島芸術祈願祭」を無事に開催できましたのはご協力頂いた関係者の皆様、素晴らしい作品を創作された作者の方々のお力あってのことはいうまでもありません。心より深く御礼申し上げるとともに、皆様のこれからの益々のご発展、ご健康をお祈りしております。