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2022-12-16 00:00:00

福岡 / 太宰府館

福岡 / 太宰府館

太宰府文芸祭「詩楽の歌」PHOTO GALLERY

https://seiransha.jp/photo/album/1157760

- 古代国交の要衝地 -

 

彩り豊かに紅葉した木々も段々と冬木となり、陽の短さをいっそうに感じる歳末の十二月。福岡県太宰府にて「太宰府文芸祭 詩楽ノ歌」を開催させて頂きました。太宰府市は、中世の昔に日本の西の要地であった大宰府政庁跡やそれを囲む城、天神様を祀る太宰府天満宮があり、今も人々に親しまれている日本屈指の観光地です。

7世紀後半に九州筑前国(現在の福岡県の大部分)に置かれた地方行政機関が大宰府であり、軍事・外交や防衛、九州地方の内政も行い、その権限の大きさと立地から「遠の朝廷(とおのみかど)」とも呼ばれていました。大宰府政庁跡には主な建物として、政庁、学校、税司、薬司、警固所、兵馬所などがあったとされ、国の特別史跡に指定されています。また、現在の元号である「令和」の起源となった「梅花の宴」が行われた大伴家持邸跡があったといわれる坂本八幡宮や、縁結び厄除け神社としても有名な竈門神社など、訪れる価値のあるスポットが数多くあります。

その中においても、太宰府天満宮は年間約1000万人の観光客が訪れ、天神様をお祀りする全国12,000社の天満宮の総本宮としても知られています。九州最大級の規模を誇るお社であり、菅原道真公の御心霊を祀り、学問・受験の神様として全国各地から合格祈願を祈る受験生や多くの参拝客が訪れます。鳥居をくぐり、本殿までは池にかかる3つの朱塗りの橋を渡りますが、上から見ると漢字の「心」の形になっていることから「心字池」と名付けられています。この3つの橋は過去・現在・未来の三世一念を表し、これを渡ることによって三世の邪念を祓い、参拝者の身を清めるとも言われています。古代建築の妙を感じながら悠久の流れを感じることのできるお宮です。

桃山時代の豪壮華麗な様式を伝える現在の御本殿は1591年に再建されたもので、国の重要文化財に指定されていますが、実は天満宮は20235月から124年ぶりの大改修が行われることがアナウンスされており、展覧会開催時期は今の御本殿に参る最後の機会とも重なりました。

類いまれなる才能を世のために発揮し、左遷されても最後まで誠心を尽くし、生涯を讃えられた道真公への崇敬は学者や政治家だけにとどまらず、禅宗の僧、寺小屋の子供たちなど幅広い層にまでおよび、文道の祖また至誠の神としての信仰が広がりました。ここを訪れると、不遇な時でも誠意をもって取り組む心は現代の我々にも通ずる気持ちであることを改めて感じます。

 

- コトダマ 雪華に舞う -

 

 本展の会場は、天満宮の参道沿いに位置し、多くの土産物屋や、道真公を埋葬する際、彼が愛した梅と餅を一緒にお供えしたという故事に由来する名物菓子、梅ヶ枝餅などを販売する飲食店が軒を連ね、師走の寒さの中でも活気に溢れていました。開催期間中は、修学旅行で訪れる中・高生の団体や、地元の家族連れ、地方からの参拝客など、秋から始まった全国旅行支援制度の影響もあり、初日から沢山の人に作品を鑑賞してもらうことができました。三日目には大粒の雪が降り、御本殿や、庭園も冬化粧がなされ、いつもと違った天満宮の表情に、集まった人々もカメラを片手に思い出を写真に残していました。

 今回は、全国各地の詩歌作家の作品を九州ゆかりの有田焼のお皿に焼き付けたり、金箔の箔押し紙に写し、博多織の額で装飾し、従来とはまた違った形で作品を鑑賞して頂きました。

展示期間中には、「今まで触れたことのない日本の芸術に出会って感無量でした」、「ちょうどテレビなどでも詩歌が取り上げられているので自分もやってみたいと興味を持った」、「子供たちや友達にも見せてあげたいので我が町でも開催して欲しい」など、場所柄か、老若男女色々な世代の方からのご意見、ご感想を頂きました。今回の展覧会タイトル通り、「詩歌を楽しむ」ということを存分に味わって頂けたように感じます。

 コロナ禍も三年が経ち、これまでの外出自粛の緩和や旅行など、巣ごもりの生活スタイルが徐々に変化してきている中、日本芸術のまだ見ぬ作品を無事にご鑑賞頂けたことは大きな喜びであり、これからの世代にも繋がっていく可能性を大いに感じられた催しとなりました。太宰府で生まれた令和という言葉には、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味が込められています。人の心を動かすのは人の言葉、想いの込められたコトダマにこそ、永代に続く人の魂が語り継がれていくのだと確信しました。

 最後に、今回の「太宰府文芸祭 詩楽ノ歌」が開催できましたことは、ご協力頂いた各関係者様、素晴らしい作品を作り上げた作者の方々のお力によるものということは言うまでもありません。心から深く感謝申し上げるとともに、皆様のこれからの益々のご発展、ご健康をお祈り申し上げます。